ビジネスと技術の狭間で

データを活用して生きていく

法人化しました②

前回に続いて法人化の諸々を記載します。
今回は調べたり考えたりしたことをQ&A形式でまとめました。
fqz7c3.hatenablog.jp

設立まで

・法人の形態はどうやって決めた?

  最終的に合同会社を選択したわけですが、法人の形態は意外と多くて
  私が理解しているものだけでも10種類近く存在します。
  これらは大きく、非営利目的のものと営利目的のものに分けられます。
  前者には一般社団法人や宗教法人などがあります。この中から選ぶと
  税金面等のメリットがあるのではないかという邪な考えが一瞬浮かびましたが
  営業活動を行う上で説明が面倒くさすぎるなと思って即却下しました。
  後者の営利目的の法人(これが「会社」)には
  株式会社、合同会社合資会社、合名会社の4つがあります。
  後ろ2つの合資会社と合名会社は会社が倒産した際の債務を
  個人の財産からも弁済する義務を負う無限責任社員が必要になります。
  無限責任社員は高いリスクに見合うだけのメリットがなさそうで、
  かつ、法人設立数としても非常に少なかったのでこの2つも候補から外しました。
  残った株式会社と合同会社ですが
  これらの一番の違いは誰のお金で経営するかということだと認識しています。
  株式会社の場合は
  基本的には株主(経営者も株主である場合もある)の資金で経営するため、
  経営に関して社外に対する説明責任が重く、色々な義務が課せられます。
  一方の合同会社は基本的には社員(経営者)の資金で経営するため、
  経営に関する説明責任はほとんどありません。
  したがって、会社の運営負荷は完全に合同会社に分があります。
  それに加えて、私はマイペースにやっていきたいという気持ちが強く、
  他人の資本を入れないのが理想の姿だと考えているので合同会社を選びました。
  今のところ、合同会社のデメリットは知名度の低さぐらいかなと思っています。
  「合同会社ってことは誰かと一緒にやっているの?」と、たまに質問されます。

・本店所在地はどうやって決めた?

  私は不動産を所有していないため、選択肢としては
  借りるか実家の2択でしたが、旨味が大きいと考えた実家にしました。
  ・借りる
   こちらは部屋を占有できる物理オフィスから
   住所だけを使わせてもらうヴァーチャルオフィスまで幅があります。
   ざっと調べた感じ、東京近郊の物理オフィスであれば10万円~/月ぐらいで
   ヴァーチャルオフィスであれば1000円~/月ぐらいな相場でした。
   物理オフィスは憧れもありましたが、通勤したくないですし
   費用もかなり高かったので選択肢からはすぐに消えました。
   ヴァーチャルオフィスは費用的には問題ありませんでしたが、
   当たり外れが大きそうでかつ、もしサービスが終了した場合に
   強制的に引越しや関連する手続きが発生する点が微妙だなと感じました。
  ・実家
   実家はヴァーチャルオフィスの様な心配はほとんどありません。
   しかし、現在住んでいる東京から物理的に離れており、
   郵便物の受取と転送が必須でした。これについては
   引退して暇そうにしている父に業務委託することで解消できました。
   父に支払う費用はヴァーチャルオフィスに比べて割高ではありますが
   以下の狙いもあり許容できると判断しました。
   ・父に仕事をしてもらうことで心身の健康を保ってもらいたい。
   ・両親共に歳を取ってきたので会う頻度を増やしたい。
   ・実家の片付けを計画的に進めておきたい。
   ・生まれ育った街がどんどん変わっていって帰省する度に寂しさを感じるので
    もう少し街の変化を自分の身で感じたい。

・法人名はどうやって決めた?

  個人事業主時代の屋号の反省も踏まえて私が考えた要件は以下でした。
  ・やりたいことが伝わる
  ・長くない
  ・ユニークで検索しやすい
  ・数年経っても飽きなさそう

  表記は漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットから選ぶことになります。
  漢字はやりたいことを伝えようとして連ねると中国語みたいになってしまい、
  これを緩和しようと短くすると検索性が下がって難しそうだったので止めました。
  ひらがなは狙いすぎている印象があり、よほどハマるものが見つからない限りは
  嫌だなと思っていたので積極的には考えませんでした。
  カタカナは元が英語なら英語のままの方がかっこいいですし
  元が英語でない言葉を作り出すつもりはなかったので却下しました。
  したがって、アルファベットの名前にすることを念頭において考え始めました。
  アルファベットの名前は1単語でシンプルなものも、
  いくつかの単語から文字を拾って作るタイプのものも良いな~と思っていました。
  また、いずれの場合でも並び順のメリットがありそうなので
  できれば「A」から始まる名前にしたいな~と思っていました。
  1か月ぐらいあれこれ考えましたが、最終的には「A」で始まるというのを捨てて
  1単語のものを社名としました。
  余談ですが、考えている期間に友人と飲む機会があり、
  みんなに適当な名前をあーだこーだ言ってもらったのはとても面白かったです。

・商標はどうして出願しなかったの?

  これは、出願しても取れない可能性が高いと判断したからです。
  法人名は他社と全く同じでも本店の所在地が異なれば登記できますが、
  他社が商標登録を行っていると法人名の使用に支障が出る場合があります。
  そのため、本来は法人名の要件に入れて考えるべきでしたが
  そこまで気が回っておらず印鑑を発注した後にこのことに気付きました。
  慌てて調べてみると、国内の企業では登録はなかったのですが
  綴りが1字違い(読みは同じ)のアメリカの企業が国際商標を取得していました。
  見つけた瞬間に「うっわ」という声が出てしまいましたが、
  現状はその企業の日本での事業展開は大規模ではなさそうだったので
  当社が制限を受ける可能性は低いのではないかと考えました。
  また、この国際商標があるために、同様の読みの商標を
  国内の企業が取得できる可能性も低いだろうと考えて
  法人名を考え直したり商標を出願したりする必要はないと判断しました。

・資本金の額はどうやって決めた?

  資本金は少なすぎても多すぎてもデメリットがあります。
  上限については、設立初年度に消費税の免税事業者になる要件に
  資本金が1000万円未満というものがあるため、これを意識しました。
  一方、下限については低くしても税金的なデメリットはありませんが
  会社や経営者の信用という観点から
  最低でも200万円ぐらいはあった方が良いのかなと考えています。
  200万円の根拠はあまりないですが
  月に10万円ずつ出ていっても少なくとも1年間は保つというぐらいの感覚です。
  私の場合は見栄を張って、この下限から少し余裕を持たせた額で決めました。

・決算月はどうやって決めた?

  決算月は設立月とは関係なく決めることができます。
  これは1期目の営業期間を決定できるということでもありますが
  短くするメリットはほとんどないと思いましたので
  設立から丸1年となるように設定しました。
  ちなみに、3月決算の場合は税理士さんも忙しくて対応してもらいにくかったり
  決算月が上半期だと相対的に税務調査に入られやすいという噂があったりしますが
  決算月を左右する積極的な理由にはならないように思いました。

・なぜfreee会社設立を利用しなかったの?

  理由は以下の2点です。
  ・設立登記の手続きだけを括り出すよりも
   法人設立ワンストップサービスを利用して包括的に管理した方が楽そうだった。
  ・電子定款で申請する場合にかかる5000円の費用が
   freee会計を年間契約すると無料になるが
   年間契約の費用を正しく会計処理する方法が分からなかった。
   具体的には、個人事業主が法人設立期間中に支払った費用は
   個人事業主としての費用とするルールになっており、
   一旦個人事業主の費用としたものをどのようにしたら
   法人の費用にできるのか分かりませんでした。

設立以降

・社宅料はどうやって決めた?

  社宅賃料の全額を法人が払うと個人としては都合が良い様に思えますが
  そうすると、現物給与の支給とみなされて
  税金が掛かったり社会保険料が上がったりします。
  これを回避するために、個人は現物給与に相当する金額以上を
  社宅料として払う必要があります。
  また、面倒なことにこの金額は所得税社会保険料で異なります。
  所得税こちらから、社会保険料こちらから算出されますが、
  一般的には社会保険料の方が高くなることが多いのではないかと思います。
  私の場合は所得税社会保険料の差は数千円程度でしたので、
  所得税としては現物給与とみなされないが社会保険料としては
  一部現物給与とみなされるラインの社宅料にしました。

役員報酬をいつから払うかどうやって決めた?

  1か月目から支払う場合は以下の負担が発生するので
  2か月目以降に支払いを開始することに決めていました。
  ・源泉所得税の納付
   納期の特例承認を受けていても
   1か月目の分は適用外となるため翌月に所得税を納付する作業が必要になる。
  ・社会保険等の加入手続き
   役員報酬の支払いを開始してしまうと加入手続きを進める義務が発生する。
  逆に期限としては、役員報酬は3か月以内に支払いを開始すれば
  損金として認められるルールになっていますが
  役員賞与の届出は設立から2か月以内に行うことになっており、
  また、2か月目には設立当初に比べてだいぶ余裕ができていたこともあって
  2か月目から役員報酬の支払いを開始することにしました。

役員報酬と役員賞与の金額はどうやって決めた?

  キャッシュフローの管理で頭を悩ますことは避けたかったので
  毎月の役員報酬社会保険に加入できる程度にして
  決算月にまとめて役員賞与を支払うことにしました。
  役員賞与額の決定は悩ましいところですが
  法人として稼いだお金は所得税率が一定となるように
  毎年コンスタントに個人に移転するのがベストな戦略であると考えているので
  初年度赤字になっても良いという覚悟で強気の設定にしました。
  ちなみに裏技な感じですが、役員報酬を下げて役員賞与でまとめて支払うと
  社会保険料のテーブルの上限に達して社会保険料率を下げることができます。
  当然、払い込む厚生年金が減るので将来貰える額は減りますし
  あまり露骨にやると年金事務所から怒られるらしいので塩梅には注意が必要です。

・初年度赤字になってもデメリットはないの?

  現状、銀行から融資を受ける予定はなく、デメリットはないと考えています。

・企業型確定拠出年金は考えなかった?

  いくつかの金融機関のプランを見ましたが
  どこも社員数に依存しない固定の手数料が年に10万円程度かかる様だったので
  お得感はないと判断して止めました。
  もし社員数が5人以上になったら考えるかもしれません。

・税理士と契約しなくても大丈夫?

  今のところは問題ありません。
  freee会計の入力で悩むことが時々ありますが
  チャットで問い合わせて解決してもらえることがほとんどです。
  確定申告については、1年目はfreee申告を契約しようと考えており、
  大した内容でなければ2年目以降は自力で行うつもりです。

・IT導入補助金はどうして使わなかったの?

  freee会計は契約する予定だったので、補助金が利用できないか探ってみましたが
  割高なプランしか対象にしてもらえませんでした。
  そのため、お得感は全くなく、手続きも大変そうだったので止めました。

個人事業主はどうしてオーバーラップしてたの?

  個人事業主として締結済みの契約を法人に引継ぐには
  契約の変更手続きなどが必要になります。
  これはお客さんの負担にもなるため契約の引継ぎは行わないことにしました。
  そのため、役務の提供期間としては個人と法人とで重ならないように注意して
  個人の売掛金が解消するまでの期間について個人と法人とが共存していました。

個人事業主として普通徴収されていた個人住民税の手続きって何か必要?

  必要ありません。毎年市区町村への提出が義務付けられている
  給与支払報告書に基づいて普通徴収から特別徴収に切り替えられるそうです。

・郵便物の転送頻度はどのくらい?

  月に0回~2回です。設立から数か月経って0回の月も増えてきました。
  郵便物が届いたら写真を送ってもらうようにしていて、
  必要であれば開封もしてくれるので、現物を受け取る必要がほとんどありません。
  また、現物が必要なものでも、急ぐものは基本的にないので
  いくらかまとまったタイミングで送ってもらっています。

番外編

電子署名した定款をなくしたんだけど?

  法人設立手続き後に、ピタゴラスイッチの様なことが起きて、
  設立時に提出した資料が入ったフォルダを丸ごと削除してしまいました。
  2週間前に取っていたバックアップからほとんどのファイルは復元できましたし
  更新していたテキストファイルなどは復元ソフトを利用して復元できたのですが
  電子署名した定款は復元できませんでした。
  これについて法務局に問い合わせたところ、新たに作り直せばよく
  電子署名については登記の際にのみ必要なものだから
  なくても問題ないはずという回答があり、ほっとしました。